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事例紹介・コラム
Case Study / Column

#5. 停滞を打破せよ 廃プラスチック再生の新たな挑戦

Publish :
2025.11.07
Category :
コラム

※本記事は2025年7月に掲載された環境新聞「動静脈連携による廃プラリサイクル最前線」からの転載記事となります

資源循環システムズ株式会社
ディレクター 松田 清

動静脈の連携が難リサイクル材を資源に変える

 カーボンニュートラルの実現に向け天然資源から再生資源への転換が求められる中、近年ではマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルへの関心が高まってきている。 従来リサイクルの手法としては「マテリアル」「ケミカル」「サーマル」の手法が挙げられていたが、欧州の動向や再資源化事業等高度化法の内容から「サーマル」は「エネルギー回収」に位置づけられ、リサイクルと見做されないパラダイムシフトが起きている。

 2023年の国内における廃プラスチックの総排出量約769万トンのうち、サーマルが約492万トンを占め、マテリアルが約171万トン、ケミカルが約26万トンといまだサーマルが中心となっており、技術的・経済的課題がクリアされつつあるマテリアルリサイクルは更なる普及拡大が期待されている。しかし、マテリアルリサイクル率は2010年の23%から2023年22%と停滞を続けている。

 マテリアルリサイクルに用いられる材料は、PIR材(Post-Industrial Recycled Material)とPCR材(Post-Consumer Recycled Material)の2つに分類される。PIR材は製造工程で発生する端材や不良品などを再資源化したもので、比較的品質が高く安定供給が可能だ。一方、PCR材は消費者が使用した製品を回収・再資源化したもので、家庭、建設現場、農業、商業施設などから発生する廃プラスチックを含む。供給ポテンシャルは大きいものの、異物混入や汚れ、材質の混在といった課題がリサイクルを難しくしている。

 現状では、PIR材のような単一で綺麗な廃プラスチックが市場に流通し、優先的にリサイクルされている。しかし、廃プラスチック全体ではPIR材の割合は1割に満たず、PCR材の混合樹脂や汚れたプラスチックが大半を占める。こうした「難リサイクル材」を効率的に再資源化することが、リサイクル率向上の鍵を握っている。

 PCR材の成功例としては、PETボトルリサイクルが挙げられる。容器包装リサイクル法に基づく自治体による分別収集の徹底や、厳格な品質基準と安定的な需要の確保ができており、PETボトルをはじめ食品用容器や繊維製品に再資源化することができている。その需要に応えるべく高度な選別・洗浄技術の導入が進み、異物や汚染物を除去し、高品質な再生材を安定的に供給できる仕組みも世界に先駆けて構築されてきた。このような仕組みが構築できたのは自治体、リサイクル事業者、動脈産業(飲料・食品メーカーや繊維メーカーなど)などで協力体制を築けたことが大きく寄与している。

 一方でその他のPCR材では、複数の素材が混在していることや、汚れの問題、利用用途の需要が不透明なことがリサイクルを妨げている。それらの課題の解決にも動静脈企業の連携により出口を見据えながら、PCR材ならではの分別・選別・洗浄工程を含め工程の最適化を図ることが重要であることに変わりはない。現に建設廃棄物を建築土木保安品へリサイクルする試みなど、その他のPCR材においても動静脈連携によるマテリアルリサイクルの取組みは徐々に広がりを見せてきている。

 今後は、難リサイクル材の排出量が多い建設業界や、リサイクル材需要が高い自動車業界などにおける現状と取組み事例を掘り下げ、動静脈連携が課題に対しどのように機能しているのかを紐解きながら、更なるリサイクル材の普及拡大に向けた道筋を明らかにしていく。

※数値はいずれも一般社団法人プラスチック循環利用協会 マテリアルフロー図を参照