本文までスキップする

事例紹介・コラム
Case Study / Column

#1. 動静脈連携×デジタルを突破口に

Publish :
2024.09.03
Category :
コラム

みなさんこんにちは!iCEP PLASTICS事務局長の瀧屋です。このコラムではこれからプラスチックリサイクルに関する事例情報や、様々なトピックス解説、iCEPパートナーの各メンバーのエピソードトークなどを掲載していきます。初回は私から、iCEP PLASTICSにかける思いや取り組みたいことなどをお伝えしようと思います。

『資源循環ビジネスに変革を起こす』

まず初めに自己紹介ですが、私は現在、資源循環システムズにてリサイクルコーディネートサービスに取り組んでいます。元々私自身、学生時代から環境分野に関わる仕事で社会貢献をしたいと考え、制度設計、政策実施に興味を持ち新卒から東京都環境局の資源循環分野に入りました。行政職員としては珍しく入都してから10数年ずっと資源循環分野に携わっていました。その中で経産省、環境省、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会といった異なる職場に出向し、全国の産官学様々な方に出会ってきました。仕事を通じた出会いが今も財産になっています。中でも、廃棄物を日々収集し、リサイクルする静脈産業の皆様との出会いが転機となり、「自分達が循環ビジネスの変革を起こす」という静脈企業の熱意に心を動かされました。「自分もそのような挑戦がしたい!」という思いから一念発起、都庁を退職し、当社立ち上げメンバーとして参画したところでまさに今、その時を迎えていると実感しています。 

『再生プラスチックが利用できる環境が未来社会にとって重要』

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の時は、オリパラ大会全体の資源循環の企画づくりを担当しました。 オリパラ大会では、持続可能性の目標設定の一つにリサイクル率65%目標というものがありました。この「リサイクル」ですが、IOC(国際オリンピック委員会)では、サーマルリカバリーはリサイクルとしてカウントされません。まさに国際的には、サーマルリカバリーはリサイクルではないというのが既に出来上がっていたんですよね。一方で日本では、埋立処分を最小限にして焼却発電に最大限取り組むという体制は世界的にトップレベルにあると言えます。それが結果として、サーマルリカバリーには強いが、そこに依存した社会になってしまっているんですよね。

今日本でも、世界でもGX(グリーントランスフォーメーション)や、自律的な資源確保の動きからリサイクルが見直され始めています。特にプラスチックはあらゆる分野で利用されていますが、再生材の利用が進んでいない状況です。カーボンニュートラルの意味合いでも、これから2030年までに、どれだけ再生プラスチックが利用できる環境を整えていけるかが、2050年の未来社会を創る上で重要になってきます。そのようなこともあり私たちはプラスチックリサイクルのトータルコーディネートサービス「iCEP PLASTICS」を始めました。

『iCEP PLASTICSとは』

iCEP PLASTICSとは、”intelligence Circular Economy Platform”の略称です。iCEPの頭文字である”i”には「デジタルによるintelligence」を活用し、「動静脈が連携した今までにないidea」により、「社会に対するinnovation」を産み出し、「i(一人ひとり)が資源循環へ参加できる社会へ繋ぐ」といった想いが込められています。日本の廃プラスチックのうち、実に75%がリサイクルされずに、焼却熱回収などにまわっているんですよね。私たちは、iCEP PLASTICSによるオープンイノベーションを通じて、廃プラスチックを再生資源として循環させる社会システムの構築を目指しています。

しかしこれまで、焼却に依存してきた日本では、プラスチックリサイクルのシステムを実現するには、課題が山積みです。リサイクル施設の不足、再生材の品質と量のミスマッチ、効率的でスケールのある回収物流の不足、バージン材との価格差、再生材の輸出販売との競争など。どれも一社ではどうにもならず、産官学の各プレーヤーが本気で共同しなければ解決しない課題だと感じています。

実際に私たちはこれらの課題に対して、どのように取り組んでいくのかに触れたいと思います。キーワードは「動静脈連携」と「デジタル活用」です。 「動静脈連携」とは、資源循環の分野で、メーカー・ブランドオーナーとリサイクラーが連携することを言います。血液循環に例えてメーカー側 が「動脈企業」、リサイクラー側が「静脈企業」です。動脈企業は再生材を活用して新しい製品を社会に生み出す役割を、静脈企業は消費されたものを回収し、再生する役割を担っています。私達は動静脈企業の垣根を超えて「iCEPパートナー」として連携を行うことで、あらゆる面から解決に向けて働きかけ、社会実装化に挑みます。

特に重要なのが、静脈企業である大栄環境グループが廃プラスチックの回収・運搬・一次処理、動脈企業である八木熊が廃プラスチックの原料化や再生製品の試作・製造に実際に取り組むことで、採算性を持ったマテリアルリサイクルを成立させるためのビジネス課題の洗い出しと解決にリアルに向き合うことができます。また持続可能性なプラスチックリサイクルの仕組みを構築する上では、「デジタル活用」が欠かせません。例えば品質管理やリサイクル証明のための再生資源トレーサビリティや、AIを用いた原料開発システム等です。容易に短期間で原料を開発する環境を整えることで、製品ごとに求められる品質を適正なコストで製造することを可能にします。課題解決は簡単ではありませんが、これらに取り組むことで、ビジネスとしてのスケーラビリティに繋げられると考えています。

『動静脈連携によって道が開ける』

最後に、私たちは今、iCEP PLASTICSに賛同いただいている動静脈企業の方々とひざ詰めで知恵を出し合い、議論をぶつけ合っています。これまでできていなかったプラスチックリサイクルの仕組みづくりを行うには、動静脈企業のプロフェッショナルが互いに対等に課題解決に向けて突き詰めていくことで初めて道が開けると私は信じています。2030年にサーキュラーエコノミーを具現化するには時間がありません。排出事業者、リサイクル事業者、 ものづくり事業者が繋がり、ここiCEP PLASTICSからあるべき未来をいち早く現実に変えてゆきましょう。皆様と連携できることを楽しみにお待ちしております。